2026年5月に Google Merchant Center へ会話属性が加わってから、半年ほど経ちました。会話属性は、Google 検索の AI モードのような AI 画面で商品の詳細な特徴を伝えるために、Google Merchant Center に追加できる任意の属性です(仕様は2026年5月の記事「Google Merchant Center に6つの『会話属性』が新設」にまとめています)。
この半年で、支援会社のサービス紹介や海外のブログに「AI 対応で売上が〇〇% 改善した」という事例が出てくるようになりました。
筆者の手元でも、会話属性について相談を受けることはありますが、2026年11月の時点で具体的に導入・運用フェーズへ進んだ案件はまだありません。そこで、海外で公開されている事例を集めて、誰が、何を変えて、何で測ったかを一つずつ確かめました。
先に結論を書くと、商品フィード(この記事では短くフィードと書きます。Google Merchant Center の画面では「データソース」と表示されます)を整えるとショッピング広告や無料リスティングで売上やクリックが伸びることは、対照群を置いた実験で確認できています。一方で、AI の中で売れたという効果は、会話属性を含めて、まだ誰も示していません。その違いを確かめたうえで、日本のネットショップが今何をすべきか、何を待てばよいかを考えます。
2026年2月の記事で使った「Google Commerce Data Flow」の図で言うと、この記事が扱うのは図の青い矢印、商品ページ・商品データから Google Merchant Center、ショッピンググラフ(Shopping Graph)へ向かう側です。右上の UCP の矢印、つまり AI の中で決済まで済む話は、別の記事「日本で『AI の中で買える』はいつ来る?」に書きました。

事例をどう読むか
「会話属性で +〇〇%」という見出しには、たいてい2つの情報がありません。何を変えたのか(変えた範囲)と、何と比べたのか(測り方)です。この2つが欠けていると、会話属性を埋めただけで売上が伸びたかのように誤解してしまいます。
変えた範囲は4つに分けます。A は会話属性のみ、B はフィード全体、C はフィードに加えて広告アカウントの構造、D はフィードに加えて商品ページ・構造化データ・レビュー・サイト内施策までを含みます。測り方は、同じ期間に何も変えなかった商品群(対照群)と比べた「対照群あり」、施策の前後を比べただけの「前後比較」、「相関調査」、「記載なし」の4段階です。
あわせて、指標が AI 上の反映率なのか広告の成果なのか売上なのか、出所が Google 公式かベンダー・代理店の自社事例か第三者の調査かを見ます。自社事例は成功した案件が公開されやすいので、数字の大きさより、何を変えて何で測ったかを読み解くほうが役に立ちます。
海外の事例を、変えた範囲で分ける
一次ソースで内容を確認できた事例を、変えた範囲の順に並べます。数字はすべて発表者の説明に基づくもので、筆者が検証したものではありません。期間や国が明記されていない事例は、その旨を記しています。ROAS は広告費用対効果、CPA は獲得単価です。
| # | 事例(出所) | 変えた範囲 | 主な結果(発表者の説明) | 測り方 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | Google × lululemon(Google 公式ブログ、2026年9月16日) | A 会話属性 | 提出した会話属性が AI モードの関連する商品推薦に50%の割合で組み込まれた。売上への言及はなし | テスト。期間・地域・分母は非公開 |
| 2 | Lily.ai、小売名なし(ベンダー自社、2026年8月) | B フィード全体(タイトル・属性・説明の語句・分類の書き直し) | Google ショッピングの売上+28% | 対照群あり。広告費をそろえた A/B テスト、28日間 |
| 3 | Lily.ai × 家具小売、匿名(ベンダー自社) | B フィード全体 | 商品あたり売上+5.7%、表示+3.2%、クリック −1.3% | 対照群あり。28日間の A/B テスト、入札・予算・キャンペーン構造は固定 |
| 4 | Lily.ai × アパレル、匿名(ベンダー自社) | B フィード全体 | 対照群との差で売上+4.7%。商品・日あたり売上+7.3%、ROAS +1.3%、CPA −5% | 対照群あり。26日間 |
| 5 | FeedOps × オーストラリアの大手小売、匿名(ベンダー自社、2026年7月更新) | B 既存属性の追加(商品に関する情報 [product_highlight] 属性を約1,000商品に) | 無料リスティングの表示+14.2%、クリック+18.4%。有料のショッピング広告には明確な差はなし | 対照群あり。約1,000商品の対照群と比較。無作為に分けた実験ではないと自ら断っている。期間は非公開 |
| 6 | FeedArmy のクライアント、救急医療機器(ベンダー自社、事例動画は2025年7月) | B フィード全体(全属性を改善。入札・設定・予算は変更なし) | クリック+80%、表示回数+33%、クリック率+35%、購入率+9.4%。売上への言及はなし | 前後比較。対照群なし、期間の記載なし |
| 7 | Nespresso × fifty-five(代理店自社、ページの日付は2025年9月) | B フィード全体(生成 AI の仕組みでガイドラインへの適合と商品説明を修正) | 表示回数3倍、流入2倍 | 前後比較(PoC のテストキャンペーン)。対照群・期間・国の記載なし |
| 8 | Tinuiti × Burt’s Bees Baby(代理店自社) | C フィード+広告アカウント(タイトル・説明・商品タイプの最適化とキャンペーン再編) | 売上+84%、注文+85%、ROAS +71%、コンバージョン率+55%、クリック+19% | 前後比較。2020年春の前年同期比、対照群なし |
A に当たるのは、Google が2026年9月のブログで紹介した lululemon の1件のみです。「AI に活用された割合」の発表であり、売上やコンバージョンには触れていません。詳細は次の章で解説します。
B は6件あり、いずれもベンダーまたは代理店の自社事例です。同じ B 区分でも、対照群のある事例(#3、#4、#5)の改善幅は数%から十数%に留まります。#3はクリックが減少しながらも売上が増加しており、数字は小規模ながらも施策の方向性と整合しています。
一方、前後比較のみの事例(#6、#7)では「数倍」や「80%増」といった極端に高い数字が出ています。Lily.ai の28%増(#2)も対照群ありの試験とされていますが、詳細な実施時期や社名が非公開である点には留意が必要です。
C は Tinuiti の1件です。Tinuiti はコンバージョン率55%増とクリック19%増をフィード最適化の成果として説明していますが、これらは同一期間の前後比較数値を各施策へ割り振ったものに過ぎず、個別に効果を測定した根拠は示されていません。比較期間が2020年3〜4月であり、パンデミックに伴う需要急増期と重なっている点も考慮すべきでしょう。
D に関しては、今回の調査では掲載に値する事例が見つかりませんでした。候補はいくつか存在したものの、「AI での露出」といった定義不明な指標で成果を語るものや、実態はサイト内の AI アシスタント導入効果であるものなど、商品データの整備そのものの成果として評価できる事例はありませんでした。
D が空白であることは、商品ページや構造化データを含めた包括的な改善効果を、商品データの寄与分として切り出して測定した事例がまだ存在しないことを示唆しています。
- Retailers: Get ready for AI-driven holiday shopping
https://blog.google/products-and-platforms/products/shopping/google-shopping-updates-holiday-shopping/ - Merchant Center Conversational Attributes | Lily AI
https://www.lily.ai/blog/merchant-center-conversational-attributes - Home Furnishings Retailer: +5.7% Shopping Revenue | Lily AI
https://www.lily.ai/case-studies/home-furnishings-google-shopping-revenue-lift - Apparel Brand: 7.3% Google Shopping Revenue Lift | Lily AI
https://www.lily.ai/case-studies/performance-apparel-google-shopping-revenue-lift - Google Product Highlights Study: 18.4% More Organic Shopping Clicks | FeedOps
https://feedops.com/google-product-highlights/ - Google AI Overviews: The Product Feed Attributes You Need to Add (Most Merchants Are Missing These)
https://community.shopify.com/t/google-ai-overviews-the-product-feed-attributes-you-need-to-add-most-merchants-are-missing-these/629184 - Google Shopping Case Study – 80% More Clicks Without Increasing Ad Spend! – YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=pqFCRer5K4Y - Case Study fifty-five : NESPRESSO: Doubling Traffic and Tripling Visibility Online by Applying GenAI to Product Feed
https://www.fifty-five.com/case-study/nespresso-doubling-traffic-tripling-visibility-genai-product-feed - Shopping & Feed Case Study | Burt’s Bees Baby | Tinuiti
https://tinuiti.com/work/shopping-feed-burts-bees-baby/ - 商品に関する情報 [product_highlight] – Google Merchant Center ヘルプ
https://support.google.com/merchants/answer/9216100?hl=ja
事例から読み取れること
商品フィードを整える効果は、広告費を変えずに数%から十数%
対照群を置いた実験が存在するのは、フィード全体を書き直した単位までです。測り方が明記されている個別の事例では、商品あたり売上5.7%増、対照群との差で売上4.7%増、無料リスティングのクリック18.4%増といった規模感にとどまります。前後比較で見られる「数倍」といった数字に比べると控えめですが、筆者の実務感覚にもこちらの方が近いです。
ただし、これらの実験が何を測定しているのかは把握しておく必要があります。いずれも、すでに広告が稼働し商品が承認されているフィードを対象に、広告費や入札額を固定したまま、タイトルや属性の記述を改善した際の上乗せ分を約4週間で測定したものです。つまり、「一定水準にあるフィードをさらに磨き込んで数%〜十数%の改善を得る」というのが実験の実態です。
ベンダーの自社事例とはいえ、広告費を増やさずに売上がそれだけ伸びるのであれば、取り組む価値はあると思います。その判断基準は自社の数値から概算可能です。ショッピング広告と無料リスティングの売上に数%を掛けた金額が毎月の上乗せ分となるため、それとフィード改修にかかる工数や費用を比較すれば、投資対効果の見当がつきます。
一方で、不承認で商品が掲載されていない、出品すべき商品が未登録である、購入者が確認したい重要情報が欠落している、といった状態からの改善はまったく別の話です。
筆者の経験でも、データを修正して不承認を解消した案件や、仕様に合わせてデータを整えた結果、ショッピング広告のクリック率とコンバージョン率が向上した案件があります。後述するカインズの事例も、未登録だった商品を網羅したことが発端でした。しかし、この「欠落を埋める」施策の効果を対照群付きで厳密に測定した事例は、筆者の知る限り公開されていません。
そのインパクトは磨き込み以上に大きいはずですが、厳密に測定した公開事例がないのが現状です。「フィードを直せば売上が倍増する」という過度な期待は禁物ですが、かといって不備のあるフィードを放置してよい理由にもなりません。
なお、Google 自身が商品データの品質と成果の相関を対照群付きで検証した公式資料も、現時点では見当たりませんでした。
会話属性単体の効果は、まだ誰も示していない
Google は属性ごとの成果データを公表していません。lululemon の事例原文も「lululemon とのテストにおいて、同社が提供した会話属性が AI モードの関連する商品推薦に50%の割合で組み込まれた」という主旨にとどまり、テスト期間、地域、対象母数、比較対象は一切明かされていません。会話属性が AI の回答に採用された事実は分かりますが、それが実際の購買行動につながったかどうかは、この発表からは読み取れません。
Google Merchant Center ヘルプの「会話属性の使用方法」を2026年11月3日時点で確認しても、属性は2026年5月の発表時と同じ6種類のままで、「すべての国で使用可」と記載されているだけです。言語制限の有無や、日本語環境の AI モードで実際に反映されるかについての言及はありません。
海外の支援企業も同様の見解を示しています。Adsum は2026年6月の記事で「最終的にどのような成果をもたらすかを示す明確な前後比較の事例はまだ存在しない」と指摘しています。Dataïads も2026年9月の記事において「会話属性はショッピングの掲載順位を決める要素として文書化されたものではなく、Google もそれを文書化していない」と述べています。
Lily.ai が公表した28%増という数値も、一見すると会話属性の成果に見えますが、同社自身が「これは商品データ全体の記述を見直した成果であり、会話属性単体のベンチマークではない」と明記しています。2026年11月現在、会話属性のみを変更して売上やコンバージョンの向上を実証した事例は、筆者が調査した範囲では確認できませんでした。
- 会話属性の使用方法 – Google Merchant Center ヘルプ
https://support.google.com/merchants/answer/17085370?hl=ja - Conversational Attributes in Google Merchant Center | Adsum
https://www.adsum.nl/nieuws/conversational-attributes-in-google-merchant-center - Google Merchant Center conversational attributes · Dataïads
https://www.dataiads.io/en/blog/google-merchant-center-attributs-conversationnels
大きな数字が出ている事例ほど、複合施策
前後比較の手法ゆえに数字が誇張されやすい側面は否定できません。しかしそれを差し引いても、大幅な成果を出している事例に共通しているのは「フィード以外の要素も同時に刷新している」という点です。Tinuiti の売上84%増はフィード最適化と広告キャンペーン再編を併行した結果であり、Nespresso の表示回数3倍も、単一の属性変更ではなく生成 AI によるフィード全体の自動補正基盤を構築した成果です。
成果の規模を決定づけているのは、「どの属性を入力したか」ではなく「施策をどこまで一気通貫で整えたか」であると考えられます。この傾向は、後半で紹介する国内事例にもそのまま当てはまります。
商品フィードに載っていることが、前提条件になりつつある
ChatGPT の買い物機能について、ベンダー所属の研究者による相関調査が2つあります。Peec AI の Tom Wells 氏が2026年3月に公開した調査では、ChatGPT のショッピング枠に表示された43,000超の商品のうち83%が、Google ショッピングの自然検索上位40件と一致(強い一致)していました(Bing との一致は11%にとどまります)。
Google ショッピングの自然検索、すなわち無料リスティングの結果は Google Merchant Center のフィードをもとに生成されるため、ChatGPT に表示される商品も起点を探ればフィードに行き着く、というのがこの調査の示唆するところです。
また、Profound が2026年6月に公開した調査では、ChatGPT 上の商品オファー約100万件を30日間にわたって分析しています。その結果、フィード経由で取得された商品は店舗側が登録した項目(ブランド、画像、販売者情報など)がそのまま埋まっていたのに対し、商品ページから読み取られた商品では同じ項目が空でした。
これはデータの優劣というよりも、取得経路によって保持される属性情報に明確な差が生じていることを意味します。フィードを経由していれば、事業者が意図した通りの情報がそのまま伝達されていると解釈できます。
Google 側においては、「Google Merchant Center にデータがなければ AI モードに露出しない」と明記されたヘルプは存在しません。しかし、Google ショッピングの公式ヘルプでは、商品情報を集約する「ショッピンググラフ」の主要な情報源として Google Merchant Center を挙げており、そのデータが検索結果や生成 AI 機能に活用される旨を説明しています。
さらに、Google Merchant Center の AI パフォーマンス分析ヘルプにも「現在のデータは、オーガニック AI トラフィック(無料リスティングなど)に厳密に限定されています」との記述があります。
いずれの調査も対象地域が明示されておらず、Google の公式文書も断定的な表現を避けているため、現時点で言えるのは「フィードへの掲載が、AI 露出における前提条件になりつつある」という点までです。
- Study: 83% of ChatGPT carousels use Google Shopping data
https://searchengineland.com/new-finding-chatgpt-sources-83-of-its-carousel-products-from-google-shopping-via-shopping-query-fan-outs-470723 - What ChatGPT actually looks for and how to get your products cited higher in AI Shopping
https://www.tryprofound.com/blog/chatgpt-shopping-deep-dive - ショッピング情報のソース – Google Shopping ヘルプ
https://support.google.com/googleshopping/answer/14336735?hl=ja
データ整備は必要条件であって、十分条件ではない
ここまでの内容を俯瞰すると、「商品データさえ整えれば露出が増えて売上につながる」と捉えてしまいがちです。しかし、筆者はそうは考えていません。無料リスティングであれ AI 環境であれ、データを整備しただけで露出が劇的に跳ね上がるわけではないからです。先述の「83%が一致する」という調査も、あくまで「Google ショッピングの上位商品と一致する」ことを示しているに過ぎず、その上位に食い込めるかどうかは商品の価格競争力、人気、店舗の信頼性によって決まります。
先行事例を見ても、Lily.ai は広告費を同一条件に揃えた検証であり、Tinuiti も広告アカウント構造の再編を同時に実施しています。データ整備は、すでに存在する需要や施策の成果を増幅させるレバーであって、需要そのものを創出するわけではありません。
突き詰めれば、商品力、価格設定、配送・返品条件の利便性、レビュー評価、指名検索需要、広告運用といった、マーケティングの総合力をどれだけ高められるかという本質的な課題に帰着します。データ整備とは、そうしたマーケティングの強みが AI や Google のアルゴリズムに正しく認識されるための「土台」に過ぎません。土台がなければ強みは伝わらないという意味で「必要条件」ですが、土台があるだけで売れるわけではないため「十分条件」ではないのです。
筆者はこの関係性を、高校野球に例えてクライアントに説明しています。甲子園に出場するには、まず地区大会へのエントリーが不可欠です。Google に商品データを送る行為は、このエントリーに該当します。しかしエントリーしただけでは試合にならず、メンバー表の提出や背番号の登録といった手続きが必要です。これがデータの属性整備に当たります。
そして、地区予選を突破し甲子園で勝利を収められるかどうかは、チーム自身の実力にかかっています。商品力や価格、レビュー、広告といったマーケティングの実態こそが、この実力そのものです。エントリーと選手登録がなければグラウンドに立てませんが、登録を済ませたからといって試合に勝てるわけではないのです。
買い物での生成 AI 利用はどこまで広まっているか(2026年11月時点)
意思決定の前提として、普及の「伸び率」と「市場規模」の双方を把握しておく必要があります。なお、本章で言及する数値は変化が速いため、四半期などの節目ごとに更新していく予定です。
日本
Google 検索の「AI モード」は2025年9月9日より日本語での提供が開始されました。「AI による概要」についても、2024年8月16日の発表で日本を含む6か国へ拡大され、数週間かけて段階的に展開されました。
博報堂買物研究所が2026年6月に発表した「AI ショッパー調査」(2026年2月実施、全国20〜69歳20,000人対象)によると、買い物において生成 AI を利用しているユーザーは24.6%(約4人に1人)でした。
同調査で買い物に生成 AI を利用している層(1,276人)に絞ると、生成 AI の回答を信頼する割合は51.7%に達し、比較項目の「EC サイトのレビュー」(48.6%)を上回っています。ただし、「自分で調べた情報」(71.0%)や「企業の公式サイト」(58.7%)には及んでいません。また、最終的な購買判断を生成 AI に委ねたいと回答した人は、同対象者の60.0%を占めました。
エクスクリエが2026年5月に発表した調査(2026年4月実施、全国15〜69歳5,825人対象)では、生成 AI を月1回以上利用する層は40.6%、一度も利用したことがない層は51.8%でした。
マインディアが2026年7月に発表した調査(2026年6月実施、買い物で生成 AI 利用経験のある全国18〜59歳1,200人対象)では、購入候補の選定段階で参考にする層が68%を占める一方、ジャンル別に見ると利用は2割前後に留まり、最終判断は自ら行う傾向が見られました。
これら3つの調査は対象年齢層や母集団が異なるため単純比較はできません。しかし、「すでに利用している層の間では購買の意思決定プロセスに深く浸透し始めている一方、日本全体で見れば生成 AI の実利用はまだ過半数に達していない」という共通傾向が浮かび上がります。
- Google 検索の AI モードを日本語で提供開始します
https://blog.google/intl/ja-jp/products/explore-get-answers/ai-mode-search/ - AI による概要 : ウェブにつながる新しい方法
https://blog.google/intl/ja-jp/products/explore-get-answers/ai-overviews/ - 【HCAI Professionals】買物の決め手は”レビュー”から”生成AI”へ生成AIの信頼度はユーザーレビューを超え、約6割が最終判断も委ねたいと回答-博報堂買物研究所「AIショッパー調査」- | コーポレートニュース | 博報堂DYホールディングス
https://www.hakuhodody-holdings.co.jp/news/corporate/2026/06/6531.html - 日常生活・買い物における生成AI 活用実態調査(2026年)|株式会社エクスクリエ
https://www.excrie.co.jp/report/generativeai-lifestyle-survey-202605 - 【調査リリース】生成AIを活用した購買行動調査|株式会社マインディア | 株式会社マインディアのプレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000055.000054552.html
海外(主に米国)
Shopify が2026年8月に公開した2026年第2四半期データによると、AI 経由のセッション数は前年同期比197%増、注文件数も約3倍に急伸しています。一方で、自然検索経由のセッションは前年比12%増に留まるものの母数が圧倒的に大きく、自然検索単体で、追跡対象の全 AI プラットフォームの合計より多くのセッションを生み出しています。
同データでは、AI 経由で商品ページに到達したユーザーの購買率は、自然検索経由で商品ページに到達したユーザーより約80%高いとされています。ただし、これは商品詳細ページへ着地したセッション同士の比較であり、全体セッションの転換率ではない点に注意が必要です。また、AI 経由セッションの50%が商品詳細ページへ直接ランディングしている点も特徴的です。
2026年11月3日の第3四半期の決算説明会では、Finkelstein 社長が Q3 の数字として、AI 経由のトラフィックは前年比2.6倍、注文は3.3倍、AI 経由の買い物客は自然検索経由より64%高い率で購入し、商品ページへ直接送る割合は自然検索の3倍、と説明しました。64%の比較の基準(商品ページに到達したセッション同士か、全セッションか)は、説明会では述べられていません。同じ場で「量はまだ小さいが、利用は広がっている」とも述べています。
トラフィック規模に関しては、Similarweb の「State of Ecommerce 2026」(2026年9月)において、生成 AI からの流入は前年比203%増となったものの、小売 EC の総トラフィックに占める割合は0.4%に過ぎないと推計されています。Contentsquare が2026年1月に発表した6,500サイトの分析でも、AI 経由の流入は2025年第4四半期に前年比632%増を記録したものの、全業界の総トラフィックに対する比率は0.2%にとどまっています。
一方、Digital Commerce 360による小売企業4社への取材記事(2026年9月)では、AI 経由が全流入の約5%を占める企業もあれば、2026年初頭には2〜3%だったという企業もあります。これらは個別取材に基づく事例ですが、規模感の目安にはなります。
コンバージョン率(CVR)の傾向については調査ごとに評価が分かれています。Marketing Science 掲載の973サイトを対象とした学術調査(データ期間:2024年8月〜2025年7月)では、ChatGPT 経由の CVR は有料ソーシャル広告を上回るものの、それ以外の既存チャネル全般を下回る結果となりました。これは先述の Shopify の公表データ(高い傾向)とは対照的です。
指標の定義、計測アトリビューション、測定期間、対象業種の属性など、どの要因がこの差異を生じさせているのかを確定できる資料はなく、どちらが正しいとは言えません。
- AI and organic search are doing different jobs: What Shopify’s data shows (2026) – Shopify
https://www.shopify.com/enterprise/blog/ai-search-category-behavior - 2026 State of Ecommerce Report | Similarweb
https://www.similarweb.com/corp/reports/state-of-ecommerce-2026/ - AI is Rewriting How Consumers Discover Brands and Raising the Stakes for Experience and Loyalty
https://contentsquare.com/press/ai-is-rewriting-how-consumers-discover-brands/ - How AI referrals are impacting traffic at 4 online retailers
https://www.digitalcommerce360.com/2026/09/16/how-ai-referrals-impact-traffic-4-online-retailers/ - ChatGPT Referrals to E-Commerce Websites: How Do LLMs Compare Against Traditional Channels?
https://pubsonline.informs.org/doi/full/10.1287/mksc.2025.0489 - Study: Where ChatGPT already works in online shopping – and where it does not
https://www.frankfurt-school.de/en/news/2026/06/chatgpt-in-online-ohopping - Shopify Q3 2026 Financial Results Conference Call(ウェブキャスト、2026年11月3日)
https://www.shopify.com/investors/quarterly-results/webcast/q3-2026
読み取れること
「成長速度は極めて速いが、現時点での市場規模は依然として限定的である」というのが2026年11月時点の実情です。Shopify 自身も、Q3 の決算説明会で「量はまだ小さい」と述べています。日本国内では生成 AI の利用自体が過半数に達しておらず、米国においても、個別取材に応じた小売企業の AI 経由の送客は数%に留まっています。一気に環境が切り替わるのではなく、数年をかけて漸進的に拡大していくものと筆者は推察しています。
注目すべきは、AI 経由のトラフィックの約半数が商品ページへ直接着地するという点です。トップページやカテゴリページを経由せず、いきなり商品詳細から購買検討が始まるユーザーが増加することを意味します。商品ページ単独で商品を説明できているかどうかは、いまも人の買い物でのコンバージョン率と問い合わせ数を左右しています。AI 経由の利用が拡大すれば、同じ差が AI の回答の中でも出るようになります。
今やる・備える・検討を続ける・やらない
以上の分析を踏まえ、ネットショップが取るべきアクションを整理します。判断基準として次の5項目を考慮します。
- 商材特性:詳細なスペック(仕様・適合・素材・サイズ)が購入の決め手となるか
- 販売市場:米国・カナダ・オーストラリアなど、越境販売を展開しているか(UCP の対象国か)
- 改善余地とコスト:フィードの不備をルール設定で解消できるか、商品マスタの抜本的な改修が必要か
- 既存施策への波及効果:広告、無料リスティング、サイト内検索、CVR向上、問い合わせ削減に即効性があるか
- 計測体制:AI 経由の流入や、その前段階の変化を自社で定量的に把握できているか
これらの基準に基づき、アクションを4つのフェーズに分類しました。
| 判断 | 対象アクション | 条件・理由 |
|---|---|---|
| 今やる | Google Merchant Center のエラー解消、既存属性の拡充、商品ページへのスペック情報追加、入力ルールの整備 | AI 以外でも即座に成果が見込める。導入コストが低い。条件検索が重要な商材では最優先。 |
| 備える(準備) | 計測のベースライン策定、上流データの欠落調査、カートベンダーの UCP 対応状況の確認、注文フローの点検 | 小規模な投資で、将来の意思決定を迅速化するため。計測軸の確立が主目的。 |
| 検討を続ける | 商品マスタの抜本的改修、UCP への完全対応、全商品への会話属性実装 | 明確な判断材料(国内対応状況など)が出た段階で再考。越境販売がなければ UCP は急がない。 |
| やらない・見送る | 日本国内向けのみの UCP 先行投資、会話属性のみの外注、定義不明な「AI露出率」に基づく投資 | 2026年11月時点の日本では、効果を享受できる経路がない、または投資対効果の根拠が不明瞭。 |
「今やる」のリストに会話属性を含めていないのは、その効果を否定しているからではありません。会話属性に設定すべき情報の多くは、そもそも既存の属性項目や商品ページ自体にまだ記載されていない情報だからです。2026年9月の記事「『会話属性』だけを実装するのは罰ゲームだと思う」で提唱した優先順位は、現在も変わっていません。
「備える」のうち、計測のベースライン
準備段階で最もコストを抑えつつ重要なのが、計測のベースラインを確保しておくことです。無料リスティングとショッピング広告の成果、Google サーチコンソールのクリック数、GA4 の参照元別セッション数、および AI 経由と推定される流入を月単位で記録します。市場に大きな変化が生じた際、比較対象となる「変化前の数値」がなければ、適切な状況判断が困難になるからです。
ただし、現在の計測環境には制約がある点に留意してください。Google Merchant Center の AI パフォーマンス分析 [AI performance insights] は、2026年11月3日時点のヘルプによれば、オーストラリア、カナダ、インド、ニュージーランド、米国の英語クエリのみが対象で、日本は含まれていません。また、広告トラフィックは対象外で、クリック数やコンバージョン数についてはヘルプに記載がありません。
筆者の環境で検証した範囲では、AI モードや AI による概要経由のアクセスは、GA4 や Google サーチコンソールでも通常の検索流入と明確に判別できません。現時点では、Google サーチコンソールのクリック数と GA4 セッション数の乖離、あるいは Direct 流入の増減などから兆候を読み解くしかないのが実情です。
なお、GA4 には2026年5月に「AI アシスタント」チャネルが追加され、ChatGPT や Gemini など外部 AI からの流入は分けて見られるようになりました。ただし、Google 自身の AI モード・AI による概要経由は引き続きオーガニック検索に含まれ、区別できません。
また、AI 経由の成果は過小評価されやすいという性質も把握しておくべきでしょう。Shopify 自体も、AI による概要経由のアクセスは自然検索として計上されやすいと注記しています。Tidio の2026年3月のレポートでは、AI 流入が Direct に分類され、実態よりも少なく計測されている可能性を指摘しています。
この構造は、前述の AI アシスタントチャネルが追加された後も変わっていません。Google 自身も、コピーしたリンクやモバイルアプリ、アプリ内ブラウザ経由の訪問はリファラーが落ちて Direct に入ると説明しています。GA4 で見える AI 経由の数字は、実態の下限と考えておくのが無難です。
「AI 経由の数字が小さいから対策は不要」と断じるのは、早計かもしれません。
- AI パフォーマンス分析について – Google Merchant Center ヘルプ
https://support.google.com/merchants/answer/17200695?hl=ja - AI in E-Commerce in 2026: The New Shopping Funnel · Ayro
https://www.getlyro.ai/reports/ai-in-ecommerce
「検討を続ける」を動かすきっかけ
検討フェーズに置いた項目を形骸化させないためには、あらかじめ「再検討のトリガー」を設定しておくことが推奨されます。具体的には、以下のいずれかの事象が発生した段階で再評価を行うのが適切でしょう。
- UCP のチェックアウト機能や Universal Cart の日本国内提供が正式に発表されたとき
- Google Merchant Center の AI パフォーマンス分析が日本および日本語クエリに対応したとき
- 特定商取引法(特商法)の見直しが法案として確定したとき
- 自社サイトにおいて、AI 経由の流入や AI モードに起因すると推測される変化が一定水準を超えたとき
特商法の見直しに関しては、2026年11月3日現在、消費者庁の検討会が2026年9月10日に公表した中間取りまとめと、10月31日まで実施された意見募集(パブリックコメント)が最新の動きです。AI エージェントを介した取引については、中間取りまとめの脚注で「今後検討を行っていく必要があるとの指摘もあった」と言及されるにとどまる段階です。
なお、「備える」のアクションに含めた最終確認画面の点検は、この見直しに備えるもので、AI 対応の有無にかかわらず必要になる作業です(詳しくは UCP の記事に書きました)。
「AI 経由はまだ少ないのだから、何もしなくていい」という見方について
この見解には、半分は同意します。AI 経由の送客が数%に留まる現状で、AI 対応のみを目的に大規模なシステム改修を断行するのは時期尚早であると、筆者も考えます。「検討を続ける」に商品マスタの抜本的改修を配置したのは、そのためです。
ただし、「今やる」に分類した施策は、決して AI 対応のためだけのものではありません。Google Merchant Center のエラー解消はショッピング広告と無料リスティングの成果に直結し、商品ページに詳細なスペック情報を追加することは、ユーザーの購買率向上と問い合わせ工数の削減に寄与します。「AI 経由が増加しなかったとしても、取り組む価値が十分にある施策」こそを最優先事項としている、と捉えていただければ幸いです。
「今やる」の中身は、上流にある
「今やる」に分類した施策を具体的に進めようとすると、多くの場合、同様の課題に突き当たります。「商品ページに掲載したい情報が、そもそも商品マスタ(基幹システム)に存在しない」「バリエーション商品を集約したいが、システム上は別々の商品コードで管理されている」「表記揺れを防ぎたいが、入力フォーマットが自由記述になっている」といった課題です。
商品ページもフィードデータも、その源泉は基幹システムに登録された商品情報と、その運用プロセスにあります。上流に不備があれば、出力先であるページやフィードにも同じ欠落が生じます。したがって、本来あるべき順序は、基幹システムと入力オペレーションの整備、商品ページの最適化、既存属性の拡充、そして最後に会話属性の実装という流れです。下流のデータだけを対症療法的に修正しても、根本的な解決には至りません。
本稿では Google Merchant Center に焦点を当ててきましたが、この構造は Google に限りません。Meta のカタログも、Amazon の出品データも、元をたどれば同じ商品マスタと運用フローから作られています。マスタに「素材」の項目がなければ、どの媒体に渡すデータからも素材情報は欠落します。逆に言えば、上流を一度整備すれば、Google 向けのフィードだけでなく、ほかのプラットフォームに渡す商品データも同時に良くなります。
Google Merchant Center が求める項目群(ブランド、識別子、カテゴリ、素材、サイズ、対応機種など)は、商品を条件ベースで理解するために不可欠な情報そのものです。各プラットフォームが AI でこれらのデータをどう活用するかは一様ではなく、Google すら詳細を明文化していませんが、こうした情報をマスタに持っておくことは、どの AI に対しても「確かめられる商品」にしておく準備になるはずです。データの源泉が一つである以上、上流工程の整備はどのプラットフォームにも返ってくる投資だと筆者は考えています。
なぜ上流に穴があるのか
これは、これまでのオペレーションが不適切だったと批判するような話ではありません。従来は、商品詳細をマスタに厳密にデータ化しなくても、ユーザーは購入してくれました。鮮明な商品写真やブランドへの信頼、レビューから内容を推察し、不明点は問い合わせで解決するというプロセスが機能していたからです。そのため、商品マスタの項目を最小限に留め、入力工数を削減することは、ビジネスとして極めて合理的な判断でした。
しかしこれからは、希望条件を言語化して AI に絞り込ませるという購買行動が一般化していきます。AI は、どこにも書かれていない条件を確かめることができません。たとえば、対応機種の情報が PDF カタログの中にしか存在しない、あるいは販売チャネルごとに仕様数値が乖離しているといった商品は、AI から見れば「適合性を確認できない商品」です。
AI は、条件適合を「確認できる商品」を優先して推薦するようになるのではないか、と筆者は見ています。そうだとすれば、データ化されていない商品は候補に残りにくくなります。条件検索型の購買行動が浸透するほど、情報をデータとして保持していないことのコストは上がっていく、と考えておいたほうがよいでしょう。
上流でよく見られる「穴」
筆者が実務を通じて確認してきた代表的な課題を、症状、原因と担当部門、および解決策の順に整理しました。1〜3番目は筆者の支援経験、4番目は後述するカインズの事例をもとに分類しています。
| 課題パターン | 症状(ページ・フィードでの見え方) | 主な原因と主管部門 | 解決策の選択肢 |
|---|---|---|---|
| 商品マスタに項目がない(最多) | 素材や対応機種が商品ページに未記載、あるいは説明文内に埋没。フィードに設定する値自体が存在しない。 | 基幹システムや商品マスタに、該当情報を保持する属性欄がない(商品部、情報システム部門)。 | マスタに属性項目を追加、またはカートのカスタム項目を活用。当面は補助データソースで補う(期限付きの暫定策)。 |
| バリエーション管理の不備 | 色・サイズ違いが個別の無関係な商品として表示される。商品グループ ID [item_group_id] が付与されない。バリエーションを選択できない。 | 親子関係がマスタ上で管理されていない。カートの仕様上、SKUごとの個別URLを保持できない(商品部、情報システム部門)。 | マスタで親コードを定義。命名規則から親商品を推定する変換ルールの構築(暫定策)。カート側の制約はシステム選定の見直し。 |
| 入力情報の表記揺れ | 表記の統一感や粒度が不揃い(例:「ネイビー」「紺」「NAVY」)。タイトルの構成ルールが崩れている。 | 担当者が個別に自由記述しており、標準的な入力ルールが確立されていない(商品登録・ささげ担当部署)。 | マスタ定義に基づいた選択式入力への変更。入力ガイドラインの策定とバリデーション(チェック)機能の導入。 |
| 在庫データの不統合 | 高需要の商品が「在庫なし」と表示され、購入機会を逸している。季節品の販売終了と同時にページ自体が消失する。 | 在庫が拠点(店舗・倉庫)ごとに分断されている。取り寄せ可能な在庫を出荷可能数として計上できていない(EC運営、物流・店舗運営、情報システム部門)。 | 全拠点の在庫を統合表示。取り寄せ可能数を含めた実質的な出荷可能数を反映。販売終了品はページを残し、代替品へ誘導する。 |
最も頻繁に見られるのが、商品マスタに属性項目が欠落しているパターンです。たとえばアパレルにおける「素材」や、スマートフォンケースにおける「対応機種」など、ユーザーが比較検討の第一条件とする情報が、マスタ上にデータ項目として存在しないケースが多々あります。項目がないために商品ページへも正しく反映されず、結果としてフィードの商品の詳細 [product_detail] 属性や、新設された会話属性へ流し込むべきデータが不足することになります。
これらの情報は説明文の中に文章として含まれていることもありますが、AI も人間も、長文の説明文から特定の仕様を正確に抽出・確認する作業には限界があります。
入力の揺れに対する対策(入力ガイドやチェック機構の構築例)については、過去のツール紹介記事を併せてご参照ください。商品登録の現場(ささげ:撮影・採寸・原稿)において、迷わずに正しい値を選択できる環境を整えることが肝要です。
筆者の経験では、暫定策に留まりやすいのが実情
筆者がこれまで支援してきた案件においても、商品マスタからフィードへのデータ変換が不適切である、あるいはデータ構造が Google Merchant Center の仕様に準拠していないことが、不承認の発生やパフォーマンス停滞の主因となっているケースが多く見受けられました。
多くの現場では、Google Merchant Center 側での「暫定策」による対応を選択せざるを得ません。補助データソースや属性ルールを駆使し、マスタから抽出されたデータをフィード側で上書き、あるいは一定のアルゴリズムで自動修正する仕組みを構築します。こうした対応により不承認が解消されたケースや、ショッピング広告のクリック率・コンバージョン率が向上した事例も存在します。
Nespresso が生成 AI を活用してフィードデータを補正する仕組みを導入したのも、目指す方向性は同じです。上流工程の抜本的改善には至らなくとも、個別の手作業ではなく、システム的な仕組みによってデータの質を担保しています。
実態を明かせば、商品部門が主管するマスタ登録の運用フローそのものを変革するまで踏み込めた案件は、決して多くありません。組織的なハードルが極めて高いからです。しかし、暫定策はあくまでフィード側のみの修正であり、商品ページ側の「穴」は放置されたままとなります。表の「解決策」に「期限付き」と記したのは、上流工程の改善がなされない限り、この歪みは解消されないためです。
まず暫定策によって広告露出と販売機会を確保し、その稼いだ時間で上流工程のステークホルダーと調整を進める。この「二段構え」のアプローチが、最も現実的な戦略であると考えています。
国内事例:カインズは「上流の変革」を断行した
上流工程の改善まで踏み込んだ国内の先行事例として、カインズ EC 事業部へのインタビュー記事(CommerceZine、2026年9月3日)が非常に示唆に富んでいます。海外の比較表には入れていません。複数の施策を4年かけて重ねた結果で、どの施策の効果かは分けられておらず、数字はインタビューでの説明だからです。比較表の分け方で言えば、D に近い複合施策、前後比較、自社の説明に当たります。
取り組みの契機は、4年間にわたり EC 売上が横ばいだったことへの危機感でした。店舗には8万〜12万 SKU の商品があるにもかかわらず、EC 掲載は2〜3万 SKU に留まっていました。その主因が「商品画像の不足」にあると特定した同社は、EC 部門による自前の撮影から着手し、最終的にはバイヤーや商品管理部門を巻き込み、仕入れ段階で画像を完備する体制へと運用を刷新しました。これは、主管部門の壁を超えて「データの源泉」を修正した象徴的な例です。
また、在庫データの統合・可視化にも注力しています。閲覧頻度の高い商品が欠品状態だった課題を解決するため、メーカー取り寄せ分を含めた出荷可能数の表示へ切り替えた結果、月間4,000万円規模の売上増を実現したと報告されています。さらに出荷拠点の店舗在庫を統合して表示したところ、前年比で20%伸びたと説明しています。
これらのデータ整備に加え、コンテンツ強化や同梱チラシによる CRM 施策を積み重ねた結果、4年間で EC 売上は約3倍、自然流入数は約1.7〜1.8倍へと成長を遂げています。
この事例は SEO や既存の購買行動への最適化を主目的としたものですが、上流の入力の出どころと在庫データを直すと売上が動くこと、データに加えてコンテンツや CRM を重ねていることは、この記事で言いたいことにそのまま重なります。AI についても、次の発言があります。
AIやチャットボットの導入も同様で、お客様との関係性やファネル上の位置を見極めずに導入しても、十分な効果は得られません。
4年で売上3倍!カインズEC事業部が実践した「泥臭い商品登録」と「在庫表示改革」の裏側 (1/3):commercezine
これは SKU 数の多い大手企業の事例ではありますが、データの欠落が生じる構造自体は、事業規模にかかわらず共通しています。
- 4年で売上3倍!カインズEC事業部が実践した「泥臭い商品登録」と「在庫表示改革」の裏側 (1/3):commercezine
https://markezine.jp/article/detail/76982
さいごに
商品フィードの整備自体がもたらす効果は、対照群を置いた実験で確認されていて、広告費を変えずに数%から十数%でした。不備のあるフィードを正常化する効果はそれ以上に大きいはずですが、厳密な測定データはまだ存在しません。大幅な成果を上げている事例は、いずれもフィード以外の要素も同時に刷新した複合施策によるものです。一方で、会話属性の追加のみで売上が向上したという事例は、2026年11月の時点では見つかりませんでした。
会話属性、フィード、商品ページと、各領域を個別最適で切り出してしまうと、施策は途切れてしまいます。筆者の経験上、その断絶の多くは、冒頭の図で示した商品ページよりもさらに手前、すなわち「商品マスタと入力運用」の段階で発生しています。データ整備は、あくまでマーケティングの土台です。しかし、その土台が脆弱であれば、どれだけマーケティングに注力しても、その努力が AI や Google に正しく伝わることはありません。
もし貴社の商品ページに「掲載したいのに掲載できていない情報」があるならば、それがどの工程で滞っているのかを特定することから始めてみてください。
この記事でお伝えしたのは、フィードを整える効果は確認できているが会話属性単体の効果はまだ示されておらず、今やる価値があるのは AI 以外でも成果が出る商品データの整備で、その課題の多くは商品マスタと入力の運用にある、という話です。
エンタープライズ向けには、分業で全体をカバーするサービスがあります。一方で、中小のネットショップには、商品マスタから商品ページ、フィード、広告、計測までをひとつながりで見て相談に乗れる相手が多くありません。
Yuwai株式会社では、Google Merchant Center の構造設計を通じて、商品データの現状把握から支援を行っています。本文の「備える」に当たる上流の穴の棚卸しから始め、どこに穴があるか、どう直すか(データの持ち方、システム間の連携、入力や生成の自動化)を一緒に設計します。システムの改修そのものは、今お使いのベンダーと進めていただくことを基本に、必要に応じて小さな連携ツールの実装まで支援します。
ネットショップを運営している事業者の方へ
- 何から始めればいいかわからない
- 社内で対応できる人材がいない
- 現状が正しいのか判断できない
まずは現状の棚卸しから。原因がどこにあるか、それは誰の持ち場か(EC・マーケ、商品部、情報システム部門)、どう直すかの選択肢を、社内の意思決定や関係部署との合意にそのまま使える「診断・設計書」の形でお出しします。1時間単位の相談から、本格的な構造設計まで、段階的に支援できる形をご用意しています。
広告代理店・Web 制作会社・EC 支援会社の方へ
原因がフィードや広告の手前、クライアントの商品マスタや入力の運用にある場合、そこから先は支援の契約範囲の外になりがちです。パートナー型なら、クライアントの情報システム部門やベンダーとの調整に同席します。黒子型なら、御社名義でクライアントに提案できる診断と設計の材料をご用意します。






