Google 広告のコンバージョン計測において、現在はデータドリブンアトリビューション(Data-Driven Attribution、以下DDA)というモデルがデフォルトで採用されるようになりました。
従来は、ラストクリックモデルがデフォルトとされ、コンバージョンまでの広告クリックの中で、最後にクリックされた広告やキーワードのみが評価対象となっていました。しかし、実際のユーザージャーニーは複雑で、コンバージョンに至るまでの各広告のクリックを同じように評価するべきではありません。
そこで、マーケティング活動における各チャネルや接点の貢献度を科学的かつ客観的に評価する手法として、アトリビューション(帰属分析)が用いられるようになってきています。
アトリビューションという考え方は、広告のレポート上における貢献度の明確化だけに留まらず、機械学習や自動入札にも適用され、活用が進んできています。
Google 広告の P-MAX キャンペーンでは、広告の評価や目標達成をするための入札戦略にアトリビューションが用いられており、アトリビューションモデル(貢献度の分配方法)にはデータドリブンアトリビューションが採用されています。
価値の向上
- 複数のチャネルにまたがるデータドリブン アトリビューションでは、コンバージョンを促進するタッチポイントの増分に対して最適化を行います。
- 最適な広告、オーディエンス、クリエイティブの組み合わせをより正確に予測するために、Google AI を使用します。
P-MAX キャンペーンについて – Google 広告 ヘルプ https://support.google.com/google-ads/answer/10724817?hl=ja
本記事では、データドリブンアトリビューションがどのように貢献度を算出し、広告の評価や入札戦略に活かしているのか、メカニズムを紐解きながらその効用について探っていきたいと思います。
できるだけ Google 広告ヘルプの情報を元にして紐解いておりますが、仕組みや影響などに関しては一部公開情報を元にした体感値や推測なども交えていますので、ここに記載されている情報全てが公式のものではないという点はご了承ください。もし、明確な誤りがある場合は指摘いただけると嬉しいです(特に中の人から)。
※P-MAX キャンペーンの仕組みに関しては下記の記事も参照ください
アトリビューションの基本概念
データドリブンアトリビューションの仕組みに入る前に、アトリビューションの基本概念についておさらいをしてみます。
デジタルデバイスの進化により、ユーザーの購買プロセスは劇的に複雑化しています。スマートフォン、PC、タブレットを行き来し、検索広告、リマーケティング、ディスプレイ広告、SNS広告など、多様なチャネルを経由してコンバージョンに至るユーザージャーニーが一般的になりました。
最後にクリックした広告だけでコンバージョンを評価する従来のラストクリックモデルでは、このような複雑なジャーニーの中で、最後にクリックされた広告のみを評価対象としていたため、初期や中間でクリックされた広告の真の貢献度を見落とすリスクがありました。
例えば、ユーザーが最初にYouTube動画広告で商品を知り、検索広告をクリックすることで興味を深め、最終的にショッピング広告でコンバージョンした場合、ラストクリックモデルではショッピング広告のみが評価されることになります。
このような背景から、各マーケティングチャネルの実質的な貢献度を科学的に評価する「アトリビューション」の概念が重要となってきたのです。
貢献度の割り振り方を決めるアトリビューションモデル
アトリビューションは各マーケティングチャネルの実質的な貢献度を科学的に評価するための概念です。この概念に基づき、コンバージョンまでにクリックされた広告に対して貢献度をどのように割り振るかを定めたものが、アトリビューションモデルです。
例えば、複数の広告をクリックしてコンバージョンに至った場合、最後にクリックした広告にのみ貢献度がすべて割り振られるのは、ラストクリックモデルと呼ばれます。
アトリビューションモデルは前出のラストクリックモデルの他にも、貢献度の割り当て方法の違いによるモデルも存在します。
- ラストクリックモデル(終点)
- 最後のクリック(タッチポイント)に対して、すべての貢献度が割り当てられる
- ファーストクリックモデル(起点)
- 最初のクリック(タッチポイント)に対して、すべての貢献度が割り当てられる
- 線形モデル(均等配分)
- コンバージョンに至るまでのすべてのクリック(タッチポイント)に対して、貢献度が均等に割り当てられる
- 減衰モデル(後方重視)
- コンバージョンに近いクリック(タッチポイント)ほど高い貢献度が割り当てられ、時間的に離れるほど貢献度が小さくなる
- 接点モデル(始点と終点重視)
- Google 広告や Google アナリティクスでは、起点と終点のクリック(タッチポイント)に40%ずつ貢献度が割り当てられ、残りの20%がその中間に発生したクリックに対して均等に割り当てられる
これらアトリビューションモデルの違いを次の図に示します。この図は、ユーザーが最初にYouTube動画広告で商品を知り、検索広告をクリックすることで興味を深め、最終的にショッピング広告でコンバージョンした場合をモデルケースとしています。図中の数値は、各タッチポイントに割り当てられる貢献度を示しており、すべてのモデルで合計が1.0(100%)となっています。
どのアトリビューションモデルを採用するべきか?は、つまり、データをどのように評価したいか?によります。どのモデルを選択したからと言って正解や不正解があるわけではありません。
最後にクリックした広告だけに貢献度を割り当てた上でデータ分析を行いたければラストクリックを採用するべきですし、コンバージョンに近いクリックほど高い貢献度を割り当てて評価をしたければ減衰モデルを採用するべきです。これは事業主による「決め」の問題になります。
データドリブンアトリビューションという新しいアトリビューションモデル
ラストクリックモデルをはじめとする従来のアトリビューションモデルは、一定のルールに基づいて貢献度を評価する手法でした。しかし、これらの固定的な評価方法では、実際のユーザー行動を正確に反映できないという課題がありました。
そこで生まれたのがデータドリブンアトリビューションという新しいアトリビューションモデルです。
データドリブンアトリビューションでは、コンバージョンに至るまでのインタラクション(=広告の操作、広告のクリックや広告動画の視聴など)したすべての広告に貢献度が割り当てられます。
従来のアトリビューションモデルでも、線形モデルや減衰モデルなど、コンバージョンに至るまでにインタラクションしたすべての広告に貢献度を割り当てるモデルは存在していました。データドリブンアトリビューションもその点では同様ですが、貢献度の算出方法が異なります。
データドリブンアトリビューションの特徴は、実際のコンバージョンデータを分析することで、各広告の貢献度を動的に評価できる点にあります。従来の固定的なルールではなく、実際のユーザー行動パターンに基づいて貢献度が算出される点が一番の特徴です。
データドリブンアトリビューションでは、協力ゲーム理論に基づいて算出されたシャープレイ値を参考に、貢献度を割り当てます。
これは、複数の広告がインタラクションされて(=協力して)コンバージョンを達成するという構造が、複数のプレイヤーが協力して成果を上げる協力ゲームの状況と類似しているためです。
引用元:データドリブン アトリビューションの方法論 – アナリティクス ヘルプ https://support.google.com/analytics/answer/3191594?hl=ja
この協力ゲーム理論やシャープレイ値が、データドリブンアトリビューションでどのように貢献度の算出に活用されているかを理解することで、Google 広告のP-MAXキャンペーンにおける広告のターゲティングや入札の最適化の仕組みについても理解が深まります。
協力ゲーム理論について理解する
まずは協力ゲーム理論について説明してみます。
協力ゲーム理論とは、複数のプレイヤーが協力することで生まれる価値と、その価値をどのように貢献度として分配するかを考えるための理論です。
個々のプレイヤーの価値を単純に足し合わせた以上の価値が、協力によって生まれる場合があります。この協力によって生まれた価値を、各プレイヤーの貢献度に応じて、どのように公平に分配するか?これが協力ゲーム理論の主な課題となります。
少しイメージしやすいように具体例を挙げてみましょう。
文化祭でチュロスを販売する場合の例
文化祭でチュロスを販売するために出店を計画している P さん。
P さんがひとりでチュロスを販売(仕入から調理も行う)と1日当たりの売上は1万円になります。そこで、P さんは知人の A さん、B さん、C さんに声を掛けて協力してもらうように考えました。A さん、B さん、C さんに協力してもらうことで次のような効果が現れるとします。(これはたとえ話なので、現実的じゃないというクレームは受けません笑)
まず、それぞれが単独で協力した場合の効果です。
- A さんだけが協力する場合
- 追加の調理台を持ち込んで調理を手伝ってくれるので提供数が2倍になる(提供数の増加)
- 売上への影響:販売数が2倍になるため、売上は1日当たり2万円になる
- B さんだけが協力する場合
- B さん独自のルートでチュロスの材料を30%引きで仕入れることができる(利益率の改善)
- 売上への影響:利益率改善により、売上は1日当たり1.5万円になる
- C さんだけが協力する場合
- C さんの立ち回りによって効率的に客を呼び込みができるようになる(販売の効率化)
- 売上への影響:回転率向上により、売上は1日当たり1.8万円になる
次に、2人が協力した場合は相乗効果により、次のような価値が生まれます。
- A さんと B さんが協力する場合(提供数の増加+利益率の改善)
- 実際の売上:4.5万円
- B さんと C さんが協力する場合(利益率の改善+販売の効率化)
- 実際の売上:4.0万円
- A さんと C さんが協力する場合(提供数の増加+販売の効率化)
- 実際の売上:4.8万円
最後に、3人全員が協力した場合は、さらなる相乗効果により次のようになります。
- A さん、B さん、C さん全員が協力する場合(提供数の増加+利益率の改善+販売の効率化)
- 実際の売上:7.5万円
このように、複数人で協力して仕事をしたときに、1人だけで仕事をするよりも増えた売上に対して、誰がどれだけ貢献したのかを公平に判断するために、シャープレイ値という数値が用いられます。
では、この例において A さん、B さん、C さんに協力してもらった場合、それぞれの協力者がどのくらい売上に貢献したかを公平に評価するため、実際のシャープレイ値を算出してみます。
- 売上パターンの整理
- 限界貢献度の算出
- 重み付き貢献度の計算
- シャープレイ値の集計
1. 売上パターンの整理
まず、シャープレイ値を算出するための第一段階として、すべての協力パターンにおける売上を次の表のように整理します。この表から、協力者が増えるほど、また特定の組み合わせによって、売上が単純な足し算以上に増加していることが分かります。
この表をベースに、次のステップでは各協力者がもたらす限界貢献度を計算していきます。
2. 限界貢献度の算出
次に、協力者が加わることで生まれる最大の貢献可能価値、つまり限界貢献度を求めます。
限界貢献度は以下のように計算します:
- 単独での貢献
- 例:Aさんが加わることで売上が1万円増加した場合、Aさんの限界貢献度は1万円
- 複数人での貢献
- 例:AさんとBさんが協力した場合 (売上増分3.5万円)
- Aさんの限界貢献度:3.0万円 (売上増分3.5万円 – Bさんの最低貢献分0.5万円)
- Bさんの限界貢献度:2.5万円 (売上増分3.5万円 – Aさんの最低貢献分1.0万円)
- 例:AさんとBさんが協力した場合 (売上増分3.5万円)
3. 重み付き貢献度の計算
限界貢献度に重みを付けて計算するのが、シャープレイ値の特徴です。重みは、その協力パターンが発生する確率を表しており、シャープレイ値を求める過程で、重みを求める計算公式によって求められます。
協力者が3人場合の重みは下記のようになります。
- 単独での協力:1/3
- 2人での協力:1/6
- 3人での協力:1/3
公式によって求めた重みを考慮すると、各協力者が参加した場合の重み付き貢献度(限界貢献度×重み)は下記のようになります。
4. シャープレイ値の集計
最後に、各協力パターンにおける重み付き貢献度を合計することで、シャープレイ値が算出されます。
- Aさん:2.50万円(0.333 + 0.500 + 0.500 + 1.167)
- Bさん:1.85万円(0.167 + 0.417 + 0.367 + 0.900)
- Cさん:2.15万円(0.267 + 0.467 + 0.417 + 1.000)
このシャープレイ値は、それぞれの協力者が全体の売上増加(6.5万円)に対してどの程度貢献したかを示しています。
このことから、3人に協力を依頼した場合は、A さんが最も高い貢献(2.5万円)、C さんが次に高い貢献(2.15万円)、B さんが相対的に低い貢献(1.85万円)であることが分かりました。
この例で実際にシャープレイ値を求めると、次のようになります。
- A さん:2.50万円
- B さん:1.85万円
- C さん:2.15万円
このことから、A さんが最も高い貢献(2.5万円)、C さんが次に高い貢献(2.15万円)、B さんが相対的に低い貢献(1.85万円)であることが分かりました。このようにシャープレイ値を求める事で、公平に評価することができるようになりました。
協力ゲーム理論に基づくシャープレイ値を、実際の広告インタラクションに当てはめて計算してみる
先ほどの文化祭の例を実際に広告に置き換えてみます。
ある EC サイトが Google 広告を使って集客を行っており、広告のフォーマットとして次の広告を出稿しているとします。
- YouTube 動画広告(新規顧客へのリーチと認知強化)
- 単独出稿の場合:10万円の売上
- 商品認知とブランド構築に貢献
- 視聴完了率が高い
- 検索広告(商品に関する詳細な情報提供)
- 単独出稿の場合:20万円の売上
- 購入意欲の高いユーザーにリーチ
- クリック率が高い
- ショッピング広告(購買促進)
- 単独出稿の場合:15万円の売上
- 商品詳細の訴求に効果的
- 高い直接コンバージョン率
これらの広告を組み合わせることで、以下のような相乗効果が生まれたと仮定します。
- YouTube 動画広告 + 検索広告
- 実際の売上:45万円
- 認知された商品がスムーズに検索される
- 検索広告 + ショッピング広告
- 実際の売上:50万円
- 商品情報の補完による購買促進
- YouTube 動画広告 + ショッピング広告
- 実際の売上:35万円
- ブランド認知による購買不安の軽減
そして3つの広告すべてを組み合わせた場合は次のように仮定します。
- YouTube 動画広告 + 検索広告 + ショッピング広告
- 実際の売上:80万円
- 認知→検索→購買の自然な流れの形成
この詳細な計算は省きますが、シャープレイ値を算出すると次のような結果になります。
- YouTube 動画広告:21.25万円
- 検索広告:33.75万円
- ショッピング広告:25.00万円
※シャープレイ値の合計(80万円)が、すべての広告を組み合わせた場合の実際の売上と一致していることが分かります
ラストクリックモデルだけで評価すると、コンバージョン直前のショッピング広告に80万円という価値がすべて割り振られてしまいます。しかし、実際には複数の広告が組み合わさることで相乗効果を生んでいます。
ラストクリックモデルでは、コンバージョンまでの過程で重要な役割を果たしている YouTube 動画広告や検索広告の貢献を適切に評価できない可能性があります。
データドリブンアトリビューションが協力ゲーム理論とシャープレイ値を活用しているのは、このような数値では直接見えない広告間の相乗効果を科学的に評価し、より公平な貢献度の判断を行うためだと言えます。
データドリブンアトリビューションに対する協力ゲーム理論の適用
データドリブンアトリビューションにおいて、協力ゲーム理論における協力者(プレイヤー)は、マーケティング上の各接点(タッチポイント)になります。
Google 広告で言えば、検索広告、ディスプレイ広告、ショッピング広告、YouTube 動画広告、デマンドジェネレーションと言った広告ネットワーク、クリエイティブがそれにあたります。
広告とのインタラクション(広告の視聴やクリックなど)は、ユーザーの行動履歴におけるタッチポイントとして記録されます。例えば、YouTube 動画広告の視聴、検索広告のクリック、ショッピング広告のクリックといった一連の行動は、コンバージョンに至るまでの経路(コンバージョンパス)を形成します。
データドリブンアトリビューションでは、このようなタッチポイントの組み合わせとその順序が、コンバージョンにどのように貢献しているかを分析します。
データドリブンアトリビューションのアルゴリズムでは、協力ゲーム理論に加え、反事実的条件法も用いられています。これは、広告の表示機会が発生する度に、過去にコンバージョンに繋がった経路とコンバージョンに繋がらなかった経路の情報から、そのユーザーが通ってきた経路がコンバージョンに繋がるかどうかを判断するようになっています。
この差分から、動画広告の存在が追加のコンバージョンとコンバージョン値の増加に貢献していることが分かります。逆に言えば、動画広告が配信されていなければ、このような価値向上の機会を逃してしまう可能性があったことになります。
このように、データドリブンアトリビューションでは、協力ゲーム理論に基づいてタッチポイント(協力者)の組み合わせや順序による貢献度を評価し、過去の評価データから最も価値を生むコンバージョンパスと価値を生まないコンバージョンパスを判別することができるようになりました。これらは、科学的に公平な貢献度分配ができていることから、Google AI による機械学習と予測とも相性が良いというのも特徴です。
Google 広告の P-MAX キャンペーンのアルゴリズムに対するデータドリブンアトリビューションの適用
データドリブンアトリビューションについて概ね理解したところで、最後に Google 広告の P-MAX キャンペーンに対するデータドリブンアトリビューションの適用について考えてみます。
ここまでの解説をお読み頂けると何となく想像できると思いますが、データドリブンアトリビューションの効力が最も発揮できるのは、コンバージョンに至るまでのタッチポイントとそこから形成されるコンバージョンパスが多いシーンです。
これは、協力ゲーム理論やシャープレイ値を用いて、最も価値を生むコンバージョンパスのパターンを見いだし、将来のオークションでの予測に活用するためには、大量の過去データから学習を行う必要があるからです。
検索、動画、ディスプレイ、ショッピングなどと言った従来のキャンペーンタイプを使い分けることで、タッチポイントは増やすことができるので、広告を届けたいユーザーにリーチすることは可能です。コンバージョン計測におけるアトリビューションモデルがデータドリブンアトリビューションであれば、各キャンペーンをまたいで貢献度が分配されます。
しかしながら、目標に対する自動入札の働き方というのは、あくまでも各キャンペーンに設定された目標や入札戦略に左右されてしまいます。そのため、ユーザーのジャーニーに対して各キャンペーンが連携して入札を考慮してくれる訳ではありません。
一方で、P-MAX キャンペーンはキャンペーン内部でデータドリブンアトリビューションを活用しており、さらに、Google の持つすべての広告ネットワークに広告が掲載できることが特徴です。
と言うことは、P-MAX キャンペーンを上手くドライブさせるためには、データドリブンアトリビューションが活きるために学習データとして何をインプットさせるか?を考えれば良いと言うことになります。
繰り返しになりますが、データドリブンアトリビューションが上手く学習するためには、それ相応の量のタッチポイントを与え、結果的にコンバージョンに至るパターンとそうでは無いパターンの識別をさせることが必要なので、P-MAX キャンペーンに設定できる広告フォーマットの種類を網羅することが最優先事項になります。
結果としてユーザージャーニーにおける接点を増やすことができるので、データドリブンアトリビューションによる入札の最適化を進めることができます。一方で、広告フォーマットの数が少なければ、限定的なタッチポイントのみで評価をしなければならなくなるため、データ不足で機械学習が進まず、予測の精度も高まらないという事が起きます。
だから、P-MAX キャンペーンにおけるフォーマットの網羅性の確保というのは、データドリブンアトリビューションを活かすための最優先事項になるというわけです。
この仕組みを理解すると、P-MAX キャンペーンが上手くドライブするビジネスとそうでは無いビジネスとが分かれます。
EC のようにユーザーのジャーニーとしてのコンバージョン経路が多く、かつコンバージョンも多いようなビジネスではデータドリブンアトリビューションが活きるので、P-MAX キャンペーンも高い広告費用対効果をもたらしやすいです。
一方で、BtoB のように、コンバージョン自体が少なく、タッチポイントも検索が中心のビジネス場合は、コンバージョンパスのパターン数もコンバージョンのデータも少ないため、データドリブンアトリビューションが活かしにくいです。この場合は、個別に検索広告とデマンドジェネレーションキャンペーンなどのキャンペーンの組み合わせで頑張った方が上手くいきやすいと考えます。
注記:ポートフォリオ入札戦略でも同じ事が再現できるのでは?と思ったりもしますが、Google 広告ヘルプでは特定のグループを作成したことによってグループ内でのデータドリブンアトリビューションを加味した入札ができるようになる、といったような言及はありません。なので、ポートフォリオ入札戦略を使うことで、擬似的にデータドリブンアトリビューションによる入札の最適化が行えるわけではないと考えておくのが良いでしょう。
まとめ
データドリブンアトリビューションは比較的新しい概念ではありますが、仕組みについて分かりにくい点も多くあります。そのため、データドリブンアトリビューションを使えば良い感じで何かやってくれるくらいで考えている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、データドリブンアトリビューションに利用されている協力ゲーム理論から解説をいたしましたが、その仕組みは少々難しい内容になっていました。協力ゲーム理論やシャープレイ値の算出方法を学ぶことがこの記事の趣旨ではないので、次のポイントだけ押さえておきましょう。
- データドリブンアトリビューションでは協力ゲーム理論とシャープレイ値によって、科学的により公平な形でコンバージョンに至ったタッチポイントに貢献度を割り当てる
- この仕組みや反事実的条件法などを用いて、過去のコンバージョンに至ったタッチポイント(広告のインタラクション)とそのコンバージョンパスをすべて評価し、価値を生みやすいコンバージョンパスと価値を生みにくいコンバージョンパスを判別する
- P-MAX のようにすべてのネットワークかつ様々な広告フォーマットでユーザーにリーチできるキャンペーンは、データドリブンアトリビューションと相性が良い
- P-MAX キャンペーンを最大限に活かすにはデータドリブンアトリビューションが働きやすく状況を作る必要がある
- 広告によるタッチポイントを増やすため、登録できる広告フォーマットは全部対応することが重要である
- コンバージョンのデータやコンバージョンパスのパターンが少ないビジネスでは P-MAX キャンペーンと相性が悪い
データドリブンアトリビューションは協力ゲーム理論やシャープレイ値だけで構成されているアルゴリズムではありません。実際にはその他にも Google 秘伝のスパイスがこのアルゴリズムに含まれているはずです。なので、これがすべてではないということは注意が必要です。
冒頭でも触れましたが、デジタル端末の普及によってユーザーの行動は複雑化してきています。これに対して本当に従来のラストクリックモデルだけで判断して良いか?に対する1つの答えがこのデータドリブンアトリビューションです。
繰り返しになりますが、本来は大量のデータが揃って初めて実現できるアトリビューションモデルです。しかしながら、Google AI の進化によって少ないデータでも高精度な予測ができるようにはなってきています。とはいえ、インプットとしてデータが与えられる状況にあるにもかかわらず、Google AI に頼ってインプットできるデータの量を少ない状況のままにしておくのは効果的ではありません。
最後になりますが、Google アナリティクスのレポートでもデータドリブンアトリビューションによるモデリングが利用できる事もあり、協力ゲーム理論やシャープレイ値は核となる部分を知っておいても損はありません。Google アナリティクスでは最後のタッチポイントに貢献度が割り当てられるラストクリックモデルのため、貢献度を公平に割り当てたレポートを持って評価するという機会も増えていくでしょう。
データドリブンアトリビューションは、デジタルマーケティングにおける公平な評価という課題に対するGoogleの革新的な解答の1つと言えます。この考え方は、今後のマーケティング評価の基準として重要な役割を果たしていくのだと考えられます。
この記事は、著者が執筆した文章を生成 AI にて校正(Claude 3.5 Sonnet、Gemini Advanced、ChatGPT 4o)を行ってみました。