Google 広告のショッピング広告(以下、ショッピング広告)や Google Merchant Center と連携した P-MAX キャンペーン(以下、小売り向け P-MAX キャンペーン)での成果が伸びないと感じているとき、あなたはどのような打ち手を考え、実行していますか?
管理画面に張り付いて、キャンペーン予算や入札を調整し、除外キーワードを追加したり、クリエイティブを変えてみたり、場合によっては担当者や広告代理店を変えてきたなど、心当たりがある方も多いのではないでしょうか。
それでも状況が良くならないとき、あなたはあなた自身を、あるいはパートナーである広告代理店を責め立てているかもしれません。
このような状況が続くと、「自分たちのスキルが足りないのではないか」「もっと優秀な担当者やパートナーに頼めば変わるのではないか」と自己否定モードに入ってしまいがちです。
そんなとき、その自己否定モードから一歩引いてみましょう。
ショッピング広告や小売り向け P-MAX キャンペーンの成果が出ないのは、あなたや広告代理店のスキルが不足しているから「だけ」ではありません。
むしろ、広告運用者の腕ではどうにもならない「構造の歪み」が、あなたの努力をすべて意味の無いものにしている可能性が高いです。どれほど優秀なドライバーでも、エンジンが壊れている車や、舗装されていないでこぼこ道や、ぬかるんだ泥道ではスピードを出せません。
いまの運用体制を崩す必要も、自分自身を責める必要もありません。
まずは広告運用のさらに手前にある、成果を決定づける「土台」の正体を知ることから始めてみませんか?
なぜ「運用」では解決しないのか
Google 広告のショッピング広告や P-MAX キャンペーンの成果が伸び悩むケースでは、その成果は広告運用の「外側」に存在する原因によって大きく左右されることがあるからです。
ショッピング広告や小売り向け P-MAX キャンペーンは、構造上、大きく分けて3つの層で構成されています。

【土台】データ層(Data Layer)
建物の基礎の部分です。ここが弱いと、上層の建物や内装をどれだけ整えても家が崩れます。
Google Merchant Center にアップロードされている商品情報がこれにあたります。
商品データソース(商品フィード)に登録されている商品の「商品名」「商品説明」「Google 商品カテゴリ」「在庫」「価格」などの属性に対して、適切に情報が与えられているかが肝になっていきます。
この基礎は事業主が商品情報をカートシステムに登録する事で整えていきます。しかしながら、基礎の上に立つ建物や内装の部分まで想定して基礎作りをすることは稀なため、ショッピング広告や小売り向け P-MAX キャンペーンで成果を出すための設計になっていないケースが多いです。
そのため、この基礎がガタガタになりやすく、インプレッションの伸び悩み(検索語句との関連性)、クリック率の伸び悩み(商品名や商品画像)、不承認の頻発が起こる構造になりやすいです。
【柱】配信層(Distribution Layer)
建物の骨組みになる部分です。基礎である土台と内装をつなぐ重要な接続部です。
Google Merchant Center 自体の設定や、Google 広告側のキャンペーン設定がこの部分にあたります。
Google Merchant Center における送料や返品ポリシーの設定、レビューやプロモーション設定。加えてデータ層で蓄積している商品情報を、属性ルールや補助データソースを用いて整える事もできるレイヤーです。
最終的に Google 広告アカウントと Google Merchant Center をつなぐパイプの部分になります。この設定はショップの信頼性や品質に関わる部分でもあるため、適切に設定をしておきたいです。
データ層の商品情報が、商品とそれを探している人の向き合いだとすれば、配信層はショップと商品を探している人の向き合いの位置づけになる重要な役割を果たします。
【内装】運用層(Operation Layer)
建物の内装部分です。盤石な基礎と生活の基盤となる建物、その中でどのように生活の利便性や彩りをもたらすか、暮らしという運用が必要になる部分です。
Google 広告の管理画面で操作できるすべての部分がここにあたります。
入札戦略、予算配分、ターゲット調整、クリエイティブ改善など、広告運用の担当者が日頃からオペレーションできるレイヤーです。
多くの場合、ショッピング広告や小売り向け P-MAX キャンペーンの改善の手が入るのは3つ目の運用層だけです。しかし、1つ目と2つ目が歪んでいれば、運用層でどれだけ工夫しても効果は限定的です。
運用層の担当者は、土台や建物を作ったりメンテナンスをする役割ではないので、土台が傾いていたり、建物の柱が傾いていても、家具の配置換えや壁紙の張り替えでそれをフォローせざるをえません。
つまり、根本的な改善を望むのであれば、広告運用の担当者の手が届きにくい、土台であるデータ層の商品情報、配信層の Google Merchant Center 設定といった部分の改善が必要になります。
つまり、それは広告運用のスキルだけで改善できるものではありません。もちろん、内装に問題があればその部分を修繕するのは当然ではありますが。
こんな状況の場合、原因は土台や構造にあるかもしれません
以下のチェックリストは、広告運用の問題に見えて、実は土台や構造に原因があることが多い症状です。ご自身の広告の状況と照らし合わせてみてください。
広告パフォーマンスに関する症状
□ ショッピング広告や小売り向け P-MAX キャンペーンのコンバージョン単価や ROAS が悪化し続けている
入札や予算を調整しても改善しない場合、配信の前提構造に問題がある可能性があります。商品データの品質が低いと、Google の機械学習が正しく機能しません。最適化のための「燃料」が汚れている状態です。
□ 担当者や代理店を変えても成果が変わらない
運用者の腕ではなく、データ構造が歪んでいれば、誰が運用しても結果は変わりません。代理店の提案が毎回「入札調整」「予算再配分」「クリエイティブ改善」に終始している場合、構造の問題が見過ごされている可能性があります。
□ 広告費を増やしても、比例して成果が伸びない
構造上の「天井」にぶつかっている状態です。たとえば、商品データの属性が不足していると、Google 広告でカバーできる検索語句の幅が限られます。予算を増やしても、配信先が広がらなければ成果は頭打ちになります。
商品データ・配信に関する症状
□ Google Merchant Center 側の不承認を直しても、しばらくすると再発する
個別の不承認に対処して一時的に解消しても、繰り返すなら原因は別にあります。データの入力元やルール設計に構造的な欠陥があり、同じ種類のエラーが別の商品で発生し続けている状態です。
□ 商品データの入力元が複数に分散し、全体像を誰も把握できない
カート連携、補足フィード、属性ルール、手動修正。これらが積み重なっていくと、どのデータがどこから来ているのか、誰も正確に答えられなくなります。この状態では、1つの修正が別の場所で不整合を起こすリスクが常にあります。
□ 型番・カラー・サイズ違いの商品で配信が不安定
バリエーション商品(アパレルや靴など)の構造設計が正しくないと、在庫連動や配信制御が破綻します。特定のカラーだけ配信されない、在庫があるのに配信が止まる、といった症状はこのパターンです。
計測に関する症状
□ コンバージョンの定義が曖昧なまま運用している
CV 定義・タグ・パラメータの前提が不正確だと、最適化の方向自体がずれます。「成果が出ている」と思っていたのに、実は計測ミスだった、というケースは珍しくありません。
□ ショッピング広告経由の売上が正しく計測できていない気がする
「気がする」という時点で、計測基盤の設計に問題がある可能性が高いです。計測が不正確な状態で運用判断を重ねると、正しい施策も間違った施策も区別できなくなります。
また、自動入札が前提のいま、適切な計測によるコンバージョンデータの把握がおざなりになると、自動入札が思ったような成果を生まなくなるリスクも生じます。
これらに1つでも当てはまったら
チェックリストの症状に心当たりがあるなら、まずは構造の状態を確認してみることをお勧めします。
広告の運用を止める必要はありません。今の運用体制はそのまま維持しながら、その土台にある構造が正しく機能しているかを点検する。それだけで、既存の運用が本来の力を発揮し始めることがあります。
構造の問題は、目に見えにくいからこそ放置されがちです。しかし、放置すればするほど、その上に積み上がる運用の工夫がすべて空振りになります。
「運用を頑張っているのに成果が出ない」という状況が続いているなら、それは運用者の問題ではなく、構造の問題かもしれません。

